中国の宇宙開発・前沿科学分野の現状
2009-10-13 17:30:46 筆者:admin06 出処:日中新聞社 回数をブラウズします:0 ネット友達から評価 0 箇条
先端科学研究で大型投資続く
(リード)
独立行政法人 科学技術振興機構(JST)中国総合研究センターは7月23日、東京都内において第19回となる研究会を開催した。今春から継続して開催している「中国の科学技術分野別活動の現状および動向調査」の最終報告会となったもの。今回は中国の「宇宙開発」および「フロンティア・サイエンス(前沿科学)分野」。昨年まとめられた動向調査に、直近の動向も織り込む形で報告・解説されたもので、「宇宙開発」は日本テピア/テピア総合研究所の窪田秀雄副所長が講演、「フロンティアサイエンス分野」はテピア総合研究所(北京)の虞蕩研究員が講演した。会場には宇宙開発、先端・未領域科学に関心が深い聴衆が多数参画、質疑応答では熱心な意見交換も行われた。
(見出し)
「中国の宇宙開発の動向」
日本テピア/テピア総合研究所
副所長 窪田秀雄氏
(本文)
中国は1970年、「長征1号」で技術試験衛星「東方紅1号」の打ち上げに成功した。それまでの歴史を簡単に紹介すると、中国の宇宙開発は1956年、米国から帰国した銭学森氏の下でスタートした。当初はソビエト連邦の技術援助を受けてロケット研究が国防部第五研究院(現中国運搬ロケット技術研究院)に組織化された。57年に「中ソ軍事技術協定」が締結。ソ連からR―2型を2基購入する一方、設計図を得て、翌58年1月には甘粛省・酒泉に「衛星発射センター」を開設。60年11月にはR―2型の中国版「東風1号」を酒泉センターから発射している。
中国に限らず、宇宙開発は広く軍民が一体となった研究・開発で進展しており、中国も60年に射程1万キロの「東風3号」の開発に着手している。
その後、63年に米英ソによる部分的「核実験停止条約」の締結により、中国は独自技術による開発を推進。64年に射程2800キロの「東風3号」の開発着手。翌65年には射程4000キロの「東風4号」の開発に着手する。そして1970年4月、中国初の人工衛星打ち上げが成功し、中国は日本に次いで世界で5番目の衛星打ち上げ国となった。
中国の宇宙開発に関する基本方針は中国版宇宙白書「中国的航天」で明記されている。
2000年に発表された「中国的航天」では「中国の宇宙産業は、脆弱な産業基盤と遅れた科学・技術水準を基礎として発展してきた。中国は宇宙開発の中核技術に取り組み、自らの力で挑戦し革新する」とある。
一方、2006年の「中国的航天」では「中国の宇宙事業は、自力更生によってスタートし、自主イノベーションの中で絶えず発展してきた。自主イノベーション(創新)能力を高めることは、宇宙事業発展の戦略の基点である」とあり、21世紀以降、宇宙開発の分野で着実に実績を重ね、自信を深めている中国を紹介するとともに、巨大産業へと成長を遂げた同国の宇宙産業の一端が示された。
中国の宇宙開発に関する計画は「国家中長期科学技術発展規画綱要」を基本に、「国民経済・社会発展『第11次五ヶ年』規画綱要(06年3月)」、「『第11次五ヶ年』空間科学発展規画(07年1月)」、「ハイテク産業発展『第11次五ヶ年』規画(07年7月)」、「航天発展『第11次五ヶ年』規画(07年10月)」などがある。
このうち「航天発展…」では重点分野推進策として「遠隔探査衛星の地上システムを整理統合し、国レベルの遠隔探査衛星データセンターを設立」「長寿命、高信頼性の大容量地球静止軌道衛星・テレビ生中継衛星を開発・打ち上げ」「『北斗』衛星による航行即位システム計画を実施」「『育種衛星』の開発・打ち上げを行い、宇宙開発と農業育種技術の融合を推進する」などを掲げる。
中国の宇宙開発体制は、まず「国家航天局(CNSA)」。宇宙開発に関する中国を代表する機関で、工業・情報化部に属している。このほか、企業集団、大学・研究機関、そして人民解放軍総装備部、この4つが宇宙開発・研究を行っている。
このうち、企業としては最も重要な存在として「中国航天科技集団公司」がある。1956年設立の「国防部第5研究院」から発展、99年に正式に設立された企業で従業員数は12万人を数える(07年末)。「神舟」「長征」などのブランド、知財権を有し、4つの主力事業(宇宙飛行、戦略・戦術ミサイル、宇宙技術応用、宇宙サービス)を展開している。傘下には各種研究院、製造業、出版・印刷から人材育成まで広範の業種に及ぶ事業を行っている。
そして「中国航天科工集団公司」。やはり「国防部第5研究院」を母体に、「中国航天機電集団」を経て設立。研究院7ヶ所、科学生産基地2ヶ所、上場企業6社、事業会社600社を有し、従業員数は10万人を越える。事業の主力は宇宙防衛、情報技術、設備製造。
このほか、大学では工業・情報化部直属の7大学(北京航空航天大学ほか)、国防科学技術大学、上海交通大学・航空航天学院(08年、中央軍事委員会直属として設立)などある。
重要な研究機関としては「人民解放軍総装備部」も欠かせない。発射場3ヶ所(酒泉、西昌、太原)のほか、4隻のダウンレンジ船「遠望」を所有する「中国衛星海上測控部」、北京、西安の衛星測控センター、北京航天医学工程研究所、「中国空気動力研究発展センター」「中国核試験基地・西北核技術研究所」が所属している。
続いて「中国運搬ロケット技術研究院」。中国最大の運搬ロケット研究実施主体で職員は約2万人。ここも傘下に数多くの研究院、企業を有している。
中国の宇宙開発予算は、中国科技統計年鑑によると01年の72・1億元から06年は119・4億元に増加(参考までに06年の日本の予算は2500億円、アメリカは約2兆円、フランスは約2000億円、ドイツは約1400億円、イタリアは約1100億円)。ちなみに専門機関による調査では、最近の中国の宇宙開発予算は30億ドルといわれる。
一方、宇宙開発に係わる研究者は、同じく中国科技統計年鑑によると、研究機関は01年には約3万人、06年時点で3・6万人。高等教育機関は01年の942人から06年には約1300人に増えた。なお、中国航天科技集団の人材確保を見ると、99年以来、2万2857人の大学・大学院卒業生を雇用、08年は2936人、09年の採用予定は3600人としている。
(見出し)
「フロンティアサイエンス分野の動向」
テピア総合研究所(北京)
主任研究員 虞 蕩氏
(本文)
フロンティアサイエンス(前沿科学)は「国家中長期科学技術発展規画」によると「先見性、先導性、探索性を有する重要な技術」「次世代のハイテク、新興産業の発展の需要な基礎」「国のハイテク・イノベーション能力を総合的に体現するもの」と定義づけられている。
対象となる研究技術は広範に及ぶが、数学、物理学(基礎・高エネルギー物理など)、天文学、海洋などがそれにあたる。
分野別の各政策による取り組みを見ると、「中長期科学技術発展規画」では、数学は「離散・ランダム・量子、非線形などの問題に関する数学的理論、方法論などを含めた基礎数学の重要な課題」とともに、「他の教科との相互浸透・融合ならびに科学研究や応用から出てきた新たな課題」が明示されている。同様に物理学では「物質の深次元構造および宇宙次元の物理的法則」「凝縮系の物質および新効果」などが、また地球科学では「地球システムの各圏(大気圏、水圏ほか)間の相互作用」など。海洋では「持続可能な海洋資源の利用と海洋生態系保護などについての研究」が挙げられている。
一方、「国家『第11次5ヶ年』科学技術発展規画」によると、「数学、物理学などの基礎学科をベースとして、新興の複合学科を育成・支援するとともに全面的に調和発展させる」とし、それぞれ課題研究、インフラとプラットフォームの建設について明示している。
例えば数学では、方針として「基礎数学と応用数学の研究を全面的に発展させ、数学とライフサイエンス、地学、情報、システム科学、材料、エネルギー、環境、エンジニアリング、経済、金融などの分野と融合研究を強化する」を提示する。
このほか、物理学では方針として「素粒子物理、原子核物理、凝集態物理、ナノ科学など各学科のバランスの取れた発展」「物理学と他の学科との融合、統合の強化、新興学科の発展の促進」など。さらに「力学」「量子制御」など細分化され、方針や重点課題が整理されている。
このほか「国家科学技術支援計画『第11次五ヶ年』発展綱要」では、課題として「重大海洋災害警報及び応急技術に関する研究」「海洋石油ガスを開発・建設するための大型工事船の研究・製造に関する技術」「海洋エネルギーを開発・利用する核心技術の研究とモデル」についても明示。防災、資源開発周辺の技術研究についても、重点分野としている。
フロンティアサイエンス分野の予算としては、中国科技科技統計年鑑によると、数学分野の研究支出は年々増加。研究開発機関における支出は06年時点で4712万元に達した。一方、高等教育機関では06年時点で1億4392万元。研究テーマも増加傾向にある。
同様に物理学では06年時点で高等教育機関は9億2736万元、高等教育機関は5億5078万元、天文学は同じく研究開発機関が06年時点で2億5535万元、高等教育機関が870万元(2年連続して減少)となっている。
一方、研究人材では、数学、物理学、天文学、地球科学など研究開発、高等教育機関とも増加傾向にあるものの、例えば天文学の場合、研究開発機関887人に対し高等教育機関は81人。数学も高等教育機関4222人に対し研究開発機関は500人強と、分野・学科毎に、人材の傾斜配分が行われていることがわかる。
◆
研究成果としては、対象とする数学、物理学、地球科学など、いずれも増加傾向にある。
国際協力の分野でも大きな成果をあげており、例えば物理学では「欧州合同原子核研究機関(CERN)」との「大型ハドロン衝突型加速器プロジェクト」。米国、香港、台湾、チェコ、ロシアと行った「大亜湾でのニュートリノ実験」。日本、米国との「真空紫外線レーザーによる電子カップリング状態の観察」など数々の協力を行っている。
また「天文」「海洋」などの研究分野では高度な研究のためのプラットフォームとして実験施設の建設なども意欲的に取り組まれている。
例えば、天文分野では、2014年に完成する「電波望遠鏡(FAST:直径500メートル)」、ブラックホール研究などに威力を発揮する「天文衛星『HXMT』の打ち上げ」「広視野多目的ファイバ分光望遠鏡(LAMOST)建設」「空間天文衛星『SVOM』打ち上げ」など、数多くのプロジェクトを展開。
また、海洋分野ではエネルギー、資源開発など連携した「探査・評価技術の確立」。「深海油田開発技術(深度3000メートルでの作業プラットフォームほか)」。「浮体式石油・ガス貯蔵施設(FPSO)」。
また「海洋観測衛星の打ち上げ」「海底観測ネットワーク技術」「各種調査船建造(『大洋1号(遠洋科学調査)』『科学3号(近海域地調査)』『雪龍(極地調査)』)」など、フロンティアと呼ぶに相応しい領域での成果が続いている。
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