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訪日2000万人の陰でビザ免除悪用し不法就労 入国急増、審査に限界
2016-05-18 17:29:47   From:日本経済新聞   コメント:0 クリック:

「パスポートはどこだ」。2月下旬の早朝、茨城県鉾田市のビニールハウスが並ぶ農村の一角に、険しい声が響いた。ある農家の離れに東京入
  「パスポートはどこだ」。2月下旬の早朝、茨城県鉾田市のビニールハウスが並ぶ農村の一角に、険しい声が響いた。ある農家の離れに東京入国管理局の係官が踏み込むと40代のタイ人夫婦ら3人が身をすくめていた。

 3人は滞在期限が過ぎても帰国しない不法就労者だった。「富士山や寺院を見に行く」と適当な宿泊先を告げ、疑われることなく入国審査を抜けた。実際は富士山も寺も目にしないまま、茨城県に来て農家に住み込みで働き始めた。

 現在、訪日する外国人で目立って増えているのがタイ人だ。2015年は約79万人と過去最高を記録した。国・地域別では中国や韓国、米国に次いで6番目に多い。日本政府が13年、観光目的で滞在15日以内ならビザを免除したことも増加の理由だ。

 

前年比8割増

 

 一方、同国からの不法就労者も増えている。15年に摘発されたタイ人の不法就労者は前年比8割増の1215人。ビザ免除の制度を悪用し、観光客を装って入国審査をすり抜けさせるブローカーが暗躍している。

 茨城で摘発された夫婦は、貧しい農家を1軒ずつ回るブローカーに「日本なら月30万円は稼げる」と誘われた。手数料名目で請求された計200万円は親が借金して工面した。日本での日給は5千円で、摘発時に残ったのは14万円。借金を返すあてはない。妻(45)は「同じ境遇のタイ人が(鉾田市)周辺に100人はいる。みなだまされた」と悔しがる。

 経済大国日本で“一獲千金”を狙う不法就労者は昔からいた。ただその実態は少しずつ変わっている。

 

来日目的を確認

 

 10年前は中国や韓国、フィリピン出身者が都市部の工場や飲食店で働くケースが多かった。リーマン・ショックで仕事が激減した今は、人手不足が深刻な地方の農村にタイやベトナムから人が流れ込む。

 カギを握るのは空港や港での入国審査だ。問題がない訪日客を円滑に受け入れつつ、不法入国を防ぐためには「効率化とともにチェック体制の強化も必要」(元法務省入国管理局長の高宅茂・日本大教授)だ。パスポートを見ながら来日目的を尋ね、矛盾や嘘がないか一人ひとり確かめる丁寧な審査が欠かせない。

 政府は20年度までに入国審査官を900人増の約3300人にする方針を決めている。しかし入管内部からは「訪日客の増加ペースに追いつくのか」と不安の声が漏れる。訪日客のもてなしと不法入国の防止を両立させる難題が突きつけられている。


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