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奨学金重荷にしないで 「給付型」など教育費争点に 「社会全体で負担を」
2016-06-29 18:59:16   From:日本経済新聞   コメント:0 クリック:

   参院選で与野党がこぞって奨学金の充実を訴えている。国内には一部の私学などを除いて返済不要の奨学金はほとんどない。貸与型の奨学金を利用し、卒業時に数百万円の借金を背負う若者も多く、結婚など将来設計にも影を落とす。専門家からは、社会全体で教育費用を負担する仕組みの整備を求める意見が出ている。

 「奨学金が進学の決め手になった」。立教大経営学部3年の陣内ひなのさん(20)は毎年、大学から返済不要の50万円の給付を受けている。福岡県出身の陣内さんは母子家庭で育った。「母に負担をかけたくない」と進学先を決めかねていたとき、同大の奨学金を知った。

 高校で一定の成績を修め、保護者の収入が基準以下の受験生が対象で、2014年度の導入以来約170人が受給。入学前に受給できるかどうかが分かる。条件を満たせば4年間続けて受け取ることができる。留学先も充実していることもあり、陣内さんは進学先に立教大を選んだ。「経済的な理由で進学先を絞った友人も多い。能力や意欲のある人が学びやすい環境をつくって」と話す。

 保護者の所得の落ち込みや学費上昇を受け、国内の学生の半数は何らかの奨学金を受けている。給付型は私立大の一部などが導入するものの、大半が利用するのは日本学生支援機構(横浜市)や自治体による貸与型だ。

 「こんな金額になっているなんて……」。東京都杉並区の団体職員の男性(22)はため息をつく。母子家庭で、東北地方の国立大を今春卒業。在学中は1カ月当たり約8万円の貸与型奨学金で生活費をまかなった。

 「学業に専念できた」と感謝はするが、返済総額は400万円。毎月2万円を15年間かけて返済する。10月から始まる返済を前に「しばらく貯金はできない。まとまったお金が必要な結婚にも影響が出るのでは」と漏らす。

 こうした声を受け、今年の通常国会では給付型奨学金を巡る議論が活発化。与野党が若者票の取り込みを狙って、拡充を訴える。6月の週末、野党候補の陣営が都内の繁華街で「返済なしの奨学金を」などと書かれたビラを配っていた。選対幹部は「立ち止まって話を聞いてくれる若者が多い」と手応えを口にする。政府も与党の要請を受けて6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」に給付型の創設を盛り込んだ。

 東京大の小林雅之教授(教育社会学)が2013年に高卒者約1千人に実施した調査によると、保護者の所得が1050万円以上ある高卒者の進路は国公立大20.4%、私立大42.5%、就職5.9%。一方、400万円以下はそれぞれ7.4%、20.4%、32.1%と大きな差が出た。

 小林教授は「低所得の家庭に生まれたら進学できないという『負のスパイラル』を変えるには給付型が必要だ」と強調。「教育の成果は社会全体に還元されるのに、日本では長く家族頼みが続いている」として、教育分野により多く公的予算を振り向ける政策を求めた。


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