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温泉街、復興へ連携湧く 熊本・阿蘇
2016-08-23 10:22:18   From:日本経済新聞   コメント:0 クリック:

災害と隣り合わせの日本では、企業や地域が突然大きな損害を受ける恐れがある。事前の備えはもちろん、被災後に素早く経営や地域経済を立て直し、より強く生まれ変わる力が求められる。大災害に見舞われた地域が復興という難題にどう挑んでいるのか、現場からのルポを伝える。

 

客数8割回復

 

 熊本市内から九州有数の観光地「阿蘇くじゅう国立公園」に車で入った途端、熊本地震後に設置された交通標識が目に飛び込んできた。「国道57号通行止め」

 阿蘇大橋が崩落し、国道を通れなくなったため、阿蘇周辺の温泉地に向かう客は迂回を強いられる。温泉街にとって国道不通の痛手は大きい。

 黒川温泉(熊本県南小国町)では地震発生から大型連休明けの5月上旬まで、約4万2千人が予約をキャンセル。黒川だけでなく、県内の主な温泉街は地震発生直後、設備の損壊だけでなく断水や停電にも悩まされた。

 営業再開にこぎつけた旅館では、被災者に温泉を無料開放するなど、地域を支える観光業の復興を模索してきた。杖立温泉を抱える小国町の北里耕亮町長は「地震から1カ月間は未曽有の危機に対応した」と振り返る。

 黒川温泉では組合加盟の旅館29軒の大半が、連休後までに営業を再開。残る1軒も来秋には再開する見通しだ。だが、地震前のように「温泉王国・九州」のブランド力に頼った集客は難しい。

 熊本県の黒川温泉、杖立温泉、内牧温泉(阿蘇市)と、大分県の由布院温泉(由布市)や別府温泉(別府市)は協力して、首都圏でPR活動を展開。キャンセル続出で窮地に立つ被災地の温泉復活に向けて、共同で国に支援を要請した。

 被災地の観光業者が一丸となった要請に応え、国は今夏から宿泊料金の最大7割を助成する「九州ふっこう割」をスタート。温泉街の懸命のPR活動に国の補助金効果も加わり、阿蘇周辺の温泉に客は戻りつつある。

 黒川温泉の今夏の予約客は地震前の8割まで回復。杖立温泉の旅館日田屋では9月の予約もほぼ満室という。女将の高崎さわこさんは「一時は9月まで3千人のキャンセルが出たのに信じられない」と喜ぶ。

 

点から面へ結ぶ

 

 大分県別府市でも、6月までは宿泊者が前年比3割減だったが「7月はほぼ昨年並みだった」(ホテル経営者)。由布院温泉も「1泊3万円以下の宿はほぼ満室」(旅館オーナー)という。

 ただ、国からふっこう割の補助金を受け取れるのは2カ月後。被災地の旅館は、当座の運転資金に悩んでいる。

 ふっこう割は年末まで延長される予定だが、ある自治体職員は「既に従業員を解雇したり、廃業や売却を考えたりしている宿泊施設も少なくない」と話す。

 黒川温泉観光旅館協同組合の北里有紀代表理事も「阿蘇大橋と国道57号の完全復旧に3年はかかる。それまで客足をつなぎ留めることができるのか……」と先行きの不安を隠さない。

 国道57号の迂回路は片側1車線。事故や大渋滞が起きると周辺の温泉街は孤立する恐れが大きい。地震を機に阿蘇周辺の温泉街の間では県境を越えた連携が生まれつつある。「九州の温泉を点ではなく面でPRする工夫が、復興と再生への突破口になる」。北里代表理事はこう強調する。


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