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翁長雄志知事の「最後の抵抗」 冲縄の反米軍基地運動のリーダー
2018-08-03 12:21:08   From:日経   コメント:0 クリック:

 日本冲縄県名護市辺野古地区への米軍基地新設に反対する現地の市民団体は7月31日、冲縄県の翁長雄志知事が8月11日に開催される反基地集会に参加すると宣言した。これに先立つ7月27日、翁長知事は、前知事が基地建設に出した承認を県として撤回すると宣言したばかりだ。


 翁長知事は、基地に反対する沖縄の人々のリーダーだ。だがこの反基地運動のリーダーの率いた闘争は最後の関門に差し掛かっている。しばらく前に膵臓(すいぞう)がんの手術を受け、今年12月に知事としての任期を満了する翁長知事にとって承認撤回は「最後の賭け」と見られている。


 基地反対揺るがず


 辺野古地区は、日米両国政府が決めた在沖米軍普天間基地の移転先だ。冲縄県宜野湾市の普天間基地は、住宅地に隣接し、現地の住民に騒音や深刻な安全リスクをもたらしていることから、批判が高かった。だがこの移転計画に対しては、冲縄の人々は強烈な反対を示し、この基地が冲縄以外へと移設されることを求めてきた。


 2014年11月、新基地建設に反対する翁長氏が冲縄県知事に当選した。翁長知事は就任後、前知事による米軍基地新設のための辺野古地区の埋め立て承認に法律上の不備があったとして、この承認を取り消すと宣言した。基地建設にストップをかけ、選挙での約束を守ろうとする姿は各界からの支持を受け、翁長知事は反基地陣営のリーダー的存在となった。


 日本政府は、翁長知事が承認取り消しを撤回するようにとの国の支持に応じないとして提訴。さまざまな曲折に富んだ司法闘争を経て、最高裁は2016年末、承認取り消しの决定は違法との判断を下し、翁長知事と冲縄県は敗訴した。政府は勝訴わずか1週間後、現地の反対を押し切って新基地建設を再開。辺野古新基地の埋め立てに向けた護岸工事はほぼ完了し、まもなく埋め立て作業が始まろうとしている。


 今年7月17日、冲縄県は、防衛省冲縄防衛局に文書を提出し、辺野古付近の海域の一部地層は脆弱だと警告し、同局が環境保護面での約束を果たしていないと非難、進行中の作業をただちに停止するよう求めた。冲縄防衛局がこれに取り合わなかったことから、翁長知事は27日、前知事が与えた辺野古埋め立て作業の承認を撤回と宣言した。前回敗訴した「取り消し」とは異なり、翁長知事が今回取ったのは「撤回」の手続き。承認後の状況に変化があったとの論法だ。


 冲縄は9月、名護市など8市町村の地方議会選挙を迎える。11月には冲縄県知事選もある。今年2月に行われた知事選の「前哨戦」とされた名護市市長選挙では、翁長知事が支持する反基地陣営の候補者が、政府の支持する候補者に敗れ、反基地運動は大きな打撃を受けていた。


 アナリストによると、基地建設の続行で「現実受け入れやむなし」とのムードが高まっている上、反基地陣営の内部でも矛盾が深まっている。さらに埋め立て作業が一旦始まれば、これを逆行させるのは難しい。このため翁長知事ら反基地派にとっては、今回の承認撤回が最後の戦いの手段となる。この「切り札」を出すことで、反基地勢力を再び結集し、不利な局面を打開し、まもなくやって来る一連の選挙に向けて弾みをつけることもできる。


「最も手強い相手」


 翁長知事は1950年冲縄県那霸市生まれ。かつて14年にわたって那霸市長を務めた。2014年に市長を辞し、与党自民党を離れて冲縄県知事選に出馬、再選をはかった仲井真弘多前知事に10万票近くの差で圧勝した。翁長知事が有権者の支持を受けたのは、在日米軍に対し、普天間にある基地を辺野古に移設するのではなく、冲縄からなくすことをはっきりと求めたためだ。


 冲縄的の米軍基地問題は非常に複雑で、背景には、深刻な歴史的原因と日米同盟の戦略的考慮のほか、冲縄と日本本土の間の政治的な駆け引きや民意の綱引き、積もり積もった感情もある。現在では、在任米軍基地の多くが冲縄に集中している。


 今年4月に膵臓がんで手術を受け、後続の治療を進めてきた翁長知事は、公の場にはほとんど顔を見せなくなっている。6月に式典に出席してあいさつした際には、米軍基地の移設問題で日本政府を批判した。「民意を顧みず工事が進められている辺野古新基地建設は、沖縄の基地負担軽減に逆行しているばかりではなく、アジア(朝鮮半島)の緊張緩和の流れにも逆行していると言わざるを得ず、全く容認できるものではない」


 翁長知事は、米軍基地から派生する事件・事故、騒音をはじめとする一連の問題に県民は苦しんでいると訴えた。


 11月の冲縄県知事選挙は反基地陣営にとっては「背水の陣」となる。宜野湾市の佐喜真淳市長は最近、菅義偉内閣官房長官ら連立与党の上層部の支持を得たと伝えられており、政府陣営を代表して冲縄県知事選に出馬する可能性もある。翁長知事はまだがんのリハビリ治療中だが、再選を目指す見通しと伝える日本メディアもある。反基地陣営は翁長知事の体調を心配すると同時に、期待も高めている。自民党関係者は、翁長知事が出馬すれば辺野古基地問題が再び最大の焦点となるとして「翁長知事は最も手強い相手」と警戒をあらわにしている。


 「『辺野古に新基地を造らせない』という私の決意は県民とともにあり、これからもみじんも揺らぐことはない」と翁長知事は語る。「沖縄の米軍基地問題は、日本全体の安全保障の問題であり、国民全体で負担すべきものだ。国民には、沖縄の基地の現状や日米安全保障体制のあり方について、真摯(しんし)に考えてほしい」

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