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迫るEU離脱、どうなる英経済 貿易・金融・移民
2019-01-17 15:05:58   From:日経   コメント:0 クリック:

英国が欧州連合(EU)を離脱する期限の3月29日が迫ってきた。英国のメイ政権がEUと合意した離脱協定案が英議会下院で大差で否決され、離脱の先行きは不透明感を増している。1973年の欧州統合参加から約半世紀。英国は欧州との政治的な距離に悩みながらも、経済一体化を着実に進めてきた。離脱協議の過程で次々と離脱の代償の大きさが顕在化し、英のジレンマは深まっている。

 

 

 

貿易 物流網に混乱懸念も 英国と欧州連合(EU)のモノとサービスの貿易額は2017年に6150億ポンド(約85兆円)だった。英にとってEUは輸入額の53%、輸出額の44%を占める最大の貿易相手だ。

モノの輸入と輸出の双方で、自動車が首位を占める。欧州自動車工業会によると、17年の英国の自動車輸出額の40%をEU向けが占めた。

完成車だけでなく、部品も英国と欧州大陸の間を渡る。英国の自動車部品輸入額の8割をEUからの製品が占める。

英自動車工業会によると、EUから英へ完成車や自動車部品を運ぶトラックは、1日に1100台に上る。到着した部品は数時間以内に工場ラインで組み付けられる。

自動車を筆頭に、現在の英製造業のサプライチェーンはEUとの緊密な関係を前提としている。EU離脱により、今後は関税や通関が復活するとの見通しから、英産業界は生産地や調達地の見直しを迫られている。物流コストの増加にとどまらず、サプライチェーンの機能不全につながるとの懸念も浮上している。

 

 

 

金融 「世界の中心」地盤沈下 国際決済銀行(BIS)によると、世界のユーロ建て金利デリバティブ(金融派生商品)の75%が英国で取引されている。欧州連合(EU)から吸い寄せるカネやヒト、情報が英国の国力の源泉だ。EU離脱は世界の金融センターとして君臨してきた英金融街シティーの地位を大きく揺るがす。

英国での外国為替の取引量は、1日あたり約2.4兆ドル(約260兆円)と世界首位で、米国の2倍近い。北米とアジアの両地域に営業時間がまたがる時差の利があるほか、豊富な金融人材や透明性の高い法制度が支えとなっている。

EU域内なら1つの免許で自由に金融事業を営める「単一パスポート制度」を使い、多くの金融機関が欧州事業の拠点をロンドンに置いてきた。EU離脱後は英国に同制度が適用されなくなる。移民政策の変更により、優秀な人材を採用するハードルも高まる。

すでに外資系金融機関が欧州拠点を英国外に移す動きが出ている。アーンスト・アンド・ヤング(EY)の推計によると、少なくとも8000億ポンド(約110兆円)の資産が英国からEUに移転する見通しだ。EU離脱を前に、英・EU間の金融のつながりはすでに細り始めている。

 

 

 

移民 労働力の供給先細り 英国には372万人のEU市民が居住し、全人口の6%を占める(2018年6月まで1年間の推計)。国籍別の首位はポーランド(98万人)で、2位のルーマニア(43万人)と合わせ、中・東欧出身者が多い。移民はサービスや農業など人手不足にあえぐ産業を縁の下で支えてきた。

EUの基本条約は「ヒトの移動の自由」を保障しており、加盟国の市民は域内で査証(ビザ)なしで就労できる。多くが賃金の高い英国を目指しており、増える移民に「職を奪われる」との不安が、2016年の国民投票で英がEU離脱を決めた一因となった。

足元では、英国に流入する移民の数から流出を差し引いた純流入数は7万4000人と、国民投票直前の約4割に沈んだ。離脱後の雇用の不透明さを懸念し、母国に戻る人が増えている。

英政府はEU離脱後、高度な熟練労働者を優先して受け入れる方針を打ち出している。賃金が安い労働力に頼ってきた英産業界には打撃となる。

「主権を取り戻す」。移民政策でメイ首相はこう主張し、EUからの離脱交渉で強硬姿勢を貫いてきた。英は国境管理の厳格化を進め、欧州大陸とのヒトの往来は大きな転機を迎える。

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