中国人の東京生活:私の隣人たち
2012-07-10 18:24:34 From: コメント:0 クリック:
日本の華字紙「新華僑報」ウエブ版では、「日本の隣人たち」という文章が掲載されている。以下は要約。
東京に住もうと思った時、私は「お隣さん対応策」を色々考えた。たとえば卑屈にならず、偉そうにせず、礼儀正しく、つかず離れず、穏やかに…。毎日、何件もの物件を回り、ある部屋を見つけ、不動産屋と契約することができた。引越しした翌日の朝、私はきれいに包装したタオルを持って、お隣さんたちへあいさつに回った。ベルを鳴らすと、ドアがゆっくりと開き、チェーンの向こうに顔が半分見えた。贈り物を受け取ってほしい旨を伝えると、その半分の顔がすぐに引っ込み、ドアが「バン!」と閉められた。これが最初の訪問である。
その後も30分以上をかけて、10人以上の半分の顔を見ながら、同じ数だけのタオルを送り、訪問が終わった。隣人との最初の付き合いが、これほどまでに早く終わるとは思わなかった。ちょっと意外だった。中国の伝統的な習慣から言えば、引っ越しは一大事ではないし、大げさに歓送迎されるものではない。しかし、少なくとも「劉おばさん」や「張おじいさん」といったお隣さんたちが窓から顔を出して来たり、近所の人たちが三々五々挨拶にやってきたりする。心優しい人なら、積極的に引越しを手伝ってくれたりさえするものだ。あるいは家に入ってきて、身の上話に親身に耳を傾けたりする人もいるだろう。引越し作業が終わるころには、隣人のことが大体分かるようになっている。
礼儀正しい日本の隣人たちとは対照的なこの中国的習慣のほうが、人情味があっていいと思う。「中国人の間には個人のプライバシーがない」と外国人は言うが、私はそう思わない。まじめに生きている人間が、どうして秘密めいた暮らしをする必要があるのか。礼儀正しくても冷淡ならば、とても寒々しいではないか。とはいえ、「郷に入っては郷に従え」である。私は日本のライフスタイルを踏まえて東京で生活するほかなかった。隣人が訪れることもなく、私も規範にしたがって、他人の邪魔にならないようにした。何事もなく時は過ぎたが、それはとても寂しい日々であり、寂しさを人に伝えることもできなかった。東京という大都市に住む人はみな「冷淡病」に罹っているようだった。
引越しをして半年が過ぎ、会釈をする以外に私とお隣さんたちの関係になんら進展はなかった。ドアを閉めて自分の日々を過ごしたが、老子の言う「鶏犬の声相聞こゆるも、民は老死に至るまで、相い往来せざらん」といった生活を、東京という繁華で窒息しそうなコンクリートジャングルで暮らしたかった。息がつまりそうだったのである。俗に「遠くの親より近くの隣人」という。自分の家ははるか中国にあって、親族に会うのは難しい。私の身近な人と言えば、夫以外はお隣さんである。醤油や塩が足りないとき、気軽に隣人にもらいに行くのは気が引ける。しかし、何かが起こったときに頼りになるのは隣人だ。色々考えて、私は「餃子外交」という戦略を編み出した。
日本人は餃子好きといわれる。しかし彼らは本場の味を作れない。だから餃子を作り、お隣さんたちに配ることにしたのだ。ある日の午後、時間をかけて、熱々の餃子を作った。餃子外交の始まりである。ドアベルを鳴らして来意を告げた。訪れたのは今回が初めてではないから、あらかじめ何を語るかを考えておいた。頭一つ分のドアスペースが開けられたので、一椀の餃子を手渡すことができた。
202号の下田さんは大きな笑みを浮かべた。可愛いお椀とよだれの出そうな餃子に彼女は驚き、手を伸ばして受け取った後、半信半疑の表情で「ありがとう」と言った。東京では普通、隣人の家で水を飲むことさえしないのが大多数なのだ。餃子や麺ならなおさらあり得ない話なのだろう。次は201号室だ。黒ブチの大きなメガネをかけた森下さんは、用心深くドアを開けて餃子を受け取った。下の階に住む70歳過ぎの老夫婦は、嬉しそうにドアを半分開けながら餃子を受け取ったが、恐縮する姿にかえってこちらが恐縮した。
私の左隣に住む204号室の住人は若夫婦だ。夫人は躊躇しながらも餃子を受け取った。いずれにせよ餃子を全て送り届け、私は家に戻った。これでお隣さん対策は万全だと思った。ほどなく、ドアのベルが鳴った。隣の人がお椀を返しに来たのだ。リンゴ二つが付いてきた。しばらくすると、またノックの音がした。今回はお椀に大福が入っていた。その後1時間もたたないうちに、4つのお椀が全て戻ってきた。それにリンゴ二つと大福、味噌漬け野菜、梅干しだ。
日本人のリズムの速さは、日常の隣人関係でも同様である。餃子外交の後、お隣との関係はやはり道で会えばお辞儀をする程度に戻った。この時から私は、自分の生活を生きることにした。お隣の気を引くために餃子や中華まんじゅうを送ろうとはもう思わなくなった。私にとって日本は見知らぬ土地だ。隣人関係はなかなか奥深いものだと思う。(作者:郁乃)
(チャイナネット)
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