中国語  日本語
ホーム > デジタル記事 > 記事全文

世界の平和・共生・友愛――鳩山由紀夫元総理に聞く
2016-07-27 20:13:12   From:篠原功   コメント:0 クリック:

鳩山由紀夫元総理に世界友愛フォーラムの役割、日中関係の改善策、南シナ海の仲裁裁判判決への見解、中国が主導するAIIBなどについて聞いた。





鳩山由紀夫元総理
  
世界の平和・共生・友愛を標榜する鳩山由紀夫元総理に聞く
 
東アジアの役割、日中関係改善、南シナ海仲裁裁判判決、AIIBなど
 
 元総理の鳩山由紀夫氏は、総理在任中から友愛の理念に基づく世界平和を標榜、「東アジア共同体」の構築を目的として2013年3月、一般社団法人東アジア共同体研究所を設立した。その一環として東アジアだけでなく、広く世界の平和と共生と友愛のために自由な議論や交流のために世界友愛フォーラムを設置した。その鳩山氏に世界友愛フォーラムの役割、日中関係の改善策、南シナ海の仲裁裁判判決への見解、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)への日本の参加などについて聞いた。
 
◆冷え込んだ関係改善に民間レベルの力
 
 東アジア共同体研究所は、鳩山氏が総理時代に国家目標の一つの柱とするために作ったシンクタンクだ。この一環として世界友愛フォーラムを設置、アジアだけでなく広く世界の平和に寄与するための議論や交流を展開してきた。
 このフォーラムの活動について鳩山氏は、「一言で言うと世界の人々と仲良く暮らせる世界を作ることが目的だ。世界の現状を見ると、決して平和な状態でないことは周知の通り。ISが猛威を振るい、欧州などでもテロが頻発している。また、アジアでも紛争の火種が燻ぶっている。とにかく戦争へと突き進まないようにしなければならない。そのためにも東アジアが仲良くなり、協力的になることが重要だ。それが世界の平和への強力なメッセージを送ることに繋がる」と語った。
 特に日本と中国の果たす役割は大きいという。「その意味でも日中関係が良くなることが喫緊の課題だ。とりわけ華人の皆さんは日中が協力的になるための活動を推進することが最も大きなプラスになる。日中の政治関係が冷え込むと、華人の皆さんも大変苦労する。日中関係の改善は私どもが掲げるフォーラムの理念と一致する。日中関係が良好になるよう華人の皆さんと協力し、日中関係改善というメッセージをぜひ共有していきたい。とにかく華人の皆さんが活動しやすくなるよう、冷え込んだ関係の改善に向けて民間レベルの活動を強化していきたい」と決意を語った。
 
◆尖閣諸島は田中・周合意の「棚上げ」に戻せ
 
 鳩山氏は2009年9月16日、衆参両院の内閣総理大臣指名選挙で国民新党、社会民主党を連立与党として第93代内閣総理大臣に就任した。「私が政界にいた頃、日中関係は良好だった。しかし、菅(直人)内閣が尖閣諸島で発生した中国漁船衝突事件での対応を間違え、石原(慎太郎)都知事が尖閣諸島を東京都で買うということになり、野田(佳彦)内閣が尖閣諸島を国有化し、日中関係が険悪な関係になった」と日中関係悪化の経緯に触れた。
 「このことによって(島の問題を)脇に置いて良好な関係を保つ、(島の問題に)触れないで物事を進めるということができなくなった。1972年に田中(角栄)総理と周(恩来)総理が暗黙の了解事項として合意した『棚上げ』という状態に戻ることが第一歩だ。日中国交正常化後、多くの中国の人が日本にやってきて、相互に学び合ってきた。意義深い民間交流が行われてきた。今後は特に政治的な問題を解決しやすくする民間交流を盛んにすることが重要だ」と語った。
 
◆南シナ海問題は当事国で平和的解決を
 
 また、中国の南シナ海における主権の主張は、国際海洋法条約に違反するなどとしてフィリピンが提訴した。その仲裁裁判で、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、南シナ海をほぼ囲む境界線「九段線」は「歴史的権利を主張する法的根拠はない」などとする判決を示した。
 この点について鳩山氏は「この問題は簡単ではない。判決は両国が納得できるものでないといけない。この問題を扱うのは仲裁裁判所ではなくて、国際司法裁判所で解決すべきだ。というのは仲裁裁判所の判決が出ても中国側が認めなければ解決しないからだ」という。
 さらに仲裁裁判所の公平性が問題になったからだともいう。国際海洋法裁判所所長は外務省を退官後にこのポストに就いた柳井俊二元駐米大使で、鳩山氏は「柳井氏の意見が強く反映され、彼は裁判官の任命で5人の内4人を決めた。柳井氏は親米派で最初から結論が見えていた。その意味からも公平性・公正性に欠く。したがってその仲裁裁判所の判決に従えと言っても難しい。国際司法裁判所にかけようとならない限り、領土問題は解決しない。この問題は当事国同士の話し合いで解決すべきだ」と語る。







 2002年11月、中国ASEAN外相会議において係争の平和的解決などを盛り込んだ「南シナ海行動宣言」を採択した。「この宣言は決して武力によらず対話を通じて解決すべきだと宣言したものだ。この宣言を法的規範・法的強制力まで格上げして、領土問題は当事国が冷静に話し合いながら解決すべきだと思う。判決は柳井氏によって仕組まれたので日米の思う通りになった。アメリカはもともと中国、ASEAN、日本、韓国などが仲良くなることを望んでいない」と今回の判決の背景を説明した。
 
◆アジア諸国が領土を線引きしてから100年足らず
 
 一方、鳩山氏は中国に対しても苦言を呈する。「中国は、南シナ海は2000年前、自分の領土だったといっているが、アジア諸国は、線引きして国境を明確にしてきたヨーロッパ諸国と違い、線引きせず共存してきた。アジア諸国で植民地主義や帝国主義が幅を利かせ、国境を明確にするようになってからまだ100年ちょっとしか経っていない。したがって『2000年前から中国の領土だった』といっても、それを責められると中国にも弱い部分がある」と語った。
中国は文化大革命の頃、海洋の主権の争いだけでなく、国内問題にも大きなエネルギーを注いでいたという。したがって「ベトナムもフィリピンも『今がチャンス』とかなりの部分を我が物にした。中国は後発だから小さい岩礁を利用するしかないところがある。したがって公平な解決は大変難しいが、粘り強く解決に向かって話し合うべきだと思う」と語った。
 鳩山氏はこの7月に中国が設立を主導したアジアインフラ投資銀行(AIIB)の顧問に当たる「国際諮問委員会」の委員への就任を受託する考えを明らかにした。
 「これまでこうした役割はIMF(国際通貨基金)やADB(アジア開発銀行)や世界銀行などが果たしてきた。しかし、アジアではまだまだインフラ整備が遅れており、資金的な需要がある。新たな仕組みを作り、協力する必要性がある。それが世界の発展や平和に繋がる意義は大きい。日本が協力すれば紛争解決で大きな役割が果たせると思う。したがって現実的な協力をすべきだと考える」と強調した。
 
 

熱に関連する単語の検索:鳩山由紀夫

前の記事:ソプラノ歌手・吉崎つね子さん「心のメロディーコンサート」
次の記事:東京中国文化センターがCJIFFの耿忠理事長招き、講演会

分享到: 收藏