アグネス・チャン、ブータン視察帰国報告会
2012-06-05 12:12:04 From: コメント:0 クリック:
アグネス・チャンが子どもの幸せのために支援を呼掛け、課題に子どもの視点から迫る。
4月17日から24日の滞在中、アグネス・チャン日本ユニセフ協会大使は首都ティンプーから車と徒歩で計9時間ほどの距離にある南西部のダガナ県の山奥の集落を訪問した。テントに寝泊まりし、山の中を歩きながら向かった。ブータンの中でも比較的貧困な地域の一つであるダガナ県の子どもたちに出会い、子どもが置かれている状況を、子どもたち自身の口から、子どもたちの親や集落の人々からつぶさに聞いて回った。
ブータンでは「国民総幸福」(GNH)政策が推進されている。「心の豊かさ」ばかりが注目される傾向にあるが、経済的発展を疎かにしているわけではない。実際、首都ティンプーと農村部の間の格差は開き、山深い集落にも着実に「近代化」の波が押し寄せている。
アグネス・チャン日本ユニセフ協会大使は、ブータン政府の教育大臣やGNH委員会長官など、政府の要職にある人々、首都ティンプー及びダガナ県の集落にある小学校に教師陣にも精力的にインタビューした。
急激に変化しているブータンの子どもたちを取り巻く環境。GNHを通じて目指す子どもたちの将来について幅広く取材を実施した。伝統、文化、自然環境を守りつつ社会インフラの発展を目指すブータン。こうした状況を踏まえて現在の「幸せ」の後ろにある国民一人ひとりの努力や、この国がこれから直面していくと思われる課題を「子どもの視点」で探った。
国のリーダーが示す理念が、子供たちの生活と未来を担う「現場」にどこまで届いているか?そこには地域住民の努力や夢がどのように託されているか?ブータンの今の「幸せ」を創り上げてきたこれまでの「努力」と今後の加田についてアグネス・チャン日本ユニセフ大使が子どもの視点で報告した。
GNHは4つの基準を設けて実現
子どもの教育ではまだ課題が山積
ブータンには東京からバンコクへ行き、バンコクで一泊して首都のティンプーに向かった。ティンプーは現代化が進み、建築ラッシュに拍車がかかっていた。ティンプーは10万人都市。まず、国立総合病院を訪れた。院長兼小児・新生児科医のツェリン氏と話した。この病院の医療によって新生児の助かる率が高まったという。ベッド数は350ほどで医療機材や医療スタッフも揃っていた。しかし、医師不足が課題となっていた。
医師を育てる教育機関がない。医学部がなく、留学生もいない。外国の医師が安い給料で働いていた。しかし、外国から医師もなかなか来たがらない。そこで院長は大学病院を作って医学生を育てる計画を語った。
次いでチャンガン小学校で教育視察を行なった後、夜にはパウデル教育大臣主催のディナーで教育省およびGNH委員会関係者と歓談。ブータンでは76年に4代目国王がGDPよりGNHが大切ということで、幸福の開発を掲げてきた。具体的には①経済開発の維持②環境保護重視③伝統文化の尊重⑤良好な政治の維持――を実現するという。この4基準に照らし合わせて審査し、合致しない場合は実施しないという。幸せの開発と共にその質を高める努力をしているという。
翌19日はダガナ県へ。貧困率は20~30%で道なき道を歩いて村へ。インドが出資して水利開発が行なわれていた。電気も供給されており、住民の収入も上がっていた。これも水力発電が寄与していた。環境保護に力を入れているというがいたるところにダムが造られていた。
まず、ジンチェラ小学校へ。この小学校は山の上にあった。ユニセフと村民が力を合わせて建てた。教師一人に46人の生徒で始まったが、最近は親を説得したため子どもが学校に来るように指導した。その結果、7クラス230人に増えていた。手洗いを奨励し、朝食と昼食を学校が出している。
朝令で読経の後、生徒代表がスピーチを行なう。そのスピーチを教師が評価して国歌を歌って終わる。読経の時間が長いのに驚かされた。この後、トイレ掃除や瞑想を行なう。仏教国・ブータンでは読経や瞑想を重視しているが、まだ国民に浸透していない。そのため学校で教えて普及を図っている。
小学校には早期幼児開発センターが併設されていた。標準語が話せない子どもが多く、勉強についていけない。そのためにつくったセンターだ。ある子どもは片道3時間の山道を徒歩で通ってくる。危険な山道を、朝5時に起きて通ってくる。授業は午後4時に終わるが、早く帰らないと山道は暗くなり危険。
子どもと一緒に片道3時間歩く
「読み書き」は盲目からの開放
アグネス・チャンはその子どもと一緒に山道を歩いた。家に着くとさっそく制服から普段着に着換え、弟の子守り。この子どもは村から初めて学校へ通う家族希望の星だ。読み書きができないのは目が見えないのと同じ。どんなに大変でも学校へ行かせたい――これが家族の願いだ。
村の13歳の少女は他人の家に奉公に出され、月給2300円を家に仕送りし、妹と弟を学校に通わせていた。アスパラを山道で売ったり、野菜を育てて家計を助ける子どもなどさまざま。このような村には農業指導員が行って、村人に農業を教えている。
ジンチェラ基礎保健ユニットの保健医療現場視察やチョキ保健婦に話を聞いた。保健医療の改善で新生児や妊婦の死亡率も下がった。赤ちゃんの栄養状態も悪くない、ユニセフでは赤ちゃんの予防接種を実施してきた。しかし、課題も少なくない。まだまだ自宅お産が多いこと。病院でお産すること、母乳で育てることを奨励している。
ツァンカ村中学校を訪問した。校長に「GNHについて子どもが幸せ感を感じることは」と質問にした。すると校長は「昨日より今日、今日より明日。希望を持って生きること。電気・水道・道路などのインフラが整備されることも希望だ。学校へ通えることが幸せ。医療や教育を受ける、石鹸が使えることが幸せのベース。難しい言葉はいらない」と答えてくれた。
ブータン警察を訪問した。最近、若者の犯罪が増えているという。喧嘩、麻薬等々が増えているが、その撲滅のために若者が犯罪に手を染めないようなキャンペーンを展開している。携帯電話はブータンでは大変高額だが、若者が今最も手に入れたい品物だ。豊かになると欲望追求と幸せ感のバランスが問題になってくる。
市場に出回っている野菜はすべてインドから入ってくる。自給率をいかに向上させるか、支援国に頼りすぎるところも課題だ。GNH委員会のワンディ開発協力部主席計画調整官は「国民一人ひとりに幸せになれとは言えない。状況が揃うことが大切。道路、電気、水道が出来て、医療環境が整う。そして食べれる。そこにたどり着くことが大切。我を知って多くを望まない。充足の哲学が大事」と語っていた。
※(c)日本ユニセフ協会/2012/M.Miura
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