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勢い増す中国プライベートジェット市場
2012-07-11 10:47:25   From:篠原功   コメント:0 クリック:

 中国の富豪を中心にプライベートジェットが売れている。やがてプライベートジェットの主戦場は中国になる。




 中国の富豪を中心にプライベートジェットが売れている。その数、なんと252機に上る。今から10年前はゼロだったが、中国経済の発展に伴って富豪が増え、勢いプライベートジェットが売れるようになった。その保有台数は今後の拡大を続け、プライベートジェットの主戦場は中国になることが確実視されている。
 昨年秋の米経済誌『フォーブス』アジア版によると、個人あるいは一族が10億ドル以上の資産を保有する中国人は前年比18人増の過去最高の146人になった。富豪ランキングに入った中国人400人の資産総額は前年比4232億ドル(8%)増の4590億ドル。人民元ベースの計算によると増加幅は4%だった。
 株式会社マイジェット代表取締役社長の板井英夫氏は「富豪の数が増える一方で、その資産は着実に底上げが図られている。したがってプライベートジェットを所有する富豪も年々増えている。10年前にはゼロだったが、5年間に10機になり、2011年秋の段階で中国全体が保有している台数は90機。しかし、実際に中国国内に駐留しているプライベートジェットは252機。中国の富豪はプライベートジェットで世界中を飛び回っており、外国籍にしているケースが多い。プライベートジェットの市場は、今後10年間で5000機、20兆円市場に拡大するだろう」とその勢いを強調する。
 中国の航空法は他国との互換性がないため、中国籍で登録した航空機は、中国航空当局の認定工場しか整備・修理が受けられず、他国へのフライトが不便という理由がある。航空機には1機ごとに国籍があり、登録した国の航空法で運用することができる。
 例えばフランス国籍で登録した航空機を日本に持ち込めば、フランスの航空法に従って運用できる。特にビジネスジェットやプライベートジェットの場合は、ユーザー各自が用途に応じて最適な法体系を持つ国で登録するのが一般的だ。
 日本人の一般的な感覚では、中国人がプライベートジェットを購入するのは、中国は国土が広いからだろうと考えがちになるが、中国の富豪はプライベートジェットで世界中を飛んでいるという。

 大型ビジネスジェット国別就航機数をみても、国土面積が日本より若干小さいドイツは37機、国土面積が日本の3分の2のイギリスが40機と、いずれも日本の4倍以上。国土の大小は必ずしもビジネスジェットの利用動向と関係していない。
 板井氏は「中国人のプライベートジェット購入は①自分が全額負担で購入②リースで所有する③10人ほどの富豪が共同で購入するというケースが多い。特に共同オーナーの場合は一人が1億円を出して10億円でジェットを買えば容易に手にすることができる」という。
 プライベートジェットを所有するメリットについて板井氏は①機動性②ビジネス活用③安全性④快適性⑤節税効果を上げた。
 【機動性】企業トップの最速移動によるビジネス効率化▽エアラインの定期航路以外の地域にアクセス可能(目的地・出発時間)▽VIP対応の出入国審査(混雑したターミナルでの待ち時間の回避)▽空港到着時より搭乗までの専属エスコート。
 【ビジネスチャンス】オーナー書勇気による企業のステータス・信用度向上・宣伝効果▽ジェット機による接待・トップシークレット会談▽機内の最新ビジネスツール(インターネット、衛星電話、FAX、DVD、CD)▽ハイパフォーマンス社員へのアワード(海外招待旅行)。
 【安全性】無事故(1960年以来)▽テロ・セキュリティ対策▽ベテランパイロットによる安全飛行(飛行2時間以上のグレートパイロット)▽熟練整備士による安全定期整備。
 【快適性】快適な設備(豪華皮シート、木目会議用テーブル、収納式ダブルベッド)▽プライベートジェットクラブ専用ラウンジの利用(成田空港)▽ファーストクラスの食事、特別食を用意できる▽専属キャビンアテンダントのきめ細かなサービスが受けられる。
 【優良資産・節税効果】耐用年数による減価償却(定額法)30年~40年と極めて長い▽交通費としての経費計上(固定維持費、直接運行費)▽不動産と比較すると新品、中古ともに価格は比較的安定している▽航空機リース事業では、リース満了時に新品同様に整備されて戻る▽経済成長が著しい国(BRICs)に転売可能。
 
 昨年夏、中国民生銀行のリース子会社が米ガルフストリーム・エアロスペースに商用ジェット機50機を発注することで合意した。カタログ価格に基づくと26億ドル(約2100億円)相当で、中国の航空機リース会社が署名したビジネスジェット機の購入契約としては最大規模になった。 
 中国民生銀行のリース子会社の民生金融租賃はウェブサイトに掲載した発表資料で、契約対象にはガルフストリーム「G650」、「G550」、「G540」が含まれることを明らかにしており、実際の注文は今後3―5年に行なわれるという。
 なお、民生銀行租賃は3月末時点で、ガルフストリームやカナダのボンバルディア社製を含めビジネスジェット32機を保有していた。
 「最近はボーイング737を改造してビジネス仕様で導入するケースが増えている。ベッドはもちろん、シャワーも付いている。ソファー、デスクをはじめ、ビジネスに必要なIT機器がすべて揃っている。こうしたジェット機を保有することでステータスも上がるし、販売成績上位25名の社員をプライベートジェットで社長と共にハワイへ招待旅行へということもできる」と板井氏は強調する。
 市場ニーズの拡大を予測して中国航空当局は2008年に民間航空機産業推進のための8政策を打ち出した。その一つに自家用飛行機利用拡大のための諸施策推進がある。航空ルートの認定自由度を緩和し、フライト環境の改善策を打ち出しており、ビジネスジェットの利用環境が急速に発展する可能性がある。特に2010年に低空空域を開放し、汎用機の発展に力を入れるという戦略を打ち出しており、ビジネスジェットメーカーに巨大なチャンスをもたらす可能性が示唆されている。
  
 こうした政策を受けて今年3月に中国初のプライベートジェット機4S店(販売・アフターサービス・部品供給・情報のフィードバックサービスを行なう)が広東省珠海市にオープンした。この4S店は珠海西鋭(シーラス)通用航空有限公司が経営するもので、航空機の輸入・登録・検査・営業許可申請などの一連の関連手続きに1年余りの時間を費やして営業マニュアルと完成させた。
 今年3月に中旬に中国民生航空局(CAAC)中南地区管理局から営業許可証を得た。同社はすでに遼寧省瀋陽市と丹東市、吉林省吉林市、黒竜江省大慶市などで4S店の開業準備に着手しており、今後、中国全土に40店舗を展開する計画だ。
 昨年4月、上海国際ビジネス航空展覧会2011が上海虹橋国際空港ビジネスジェット基地で開かれた。豪華ビジネスジェット、ヘリなど国内外の大手汎用航空機メーカーが最新鋭機種を展示した。このほか地上サービス企業、期待整備会社、キャビンデザイン、飛行訓練など約100社が出展した。
 また、今年3月に開催された2012年アジアビジネス航空会議・展示会がやはり上海虹橋国際空港で開催された。この展示会には世界的な俳優のジャッキー・チェンの2億元(約24億円)のプライベートジェットも展示され、話題を呼んだ。
 いまや中国企業は自社の成長のためにビジネスジェットの活用に力を入れており、それを中国政府が政策面から全面バックアップするという構図になっており、中国プライベートジェット市場から当分目が離せない。

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