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中国からの送金にからむ税務リスク
2016-05-26 09:25:14   From:日本経済新聞   コメント:0 クリック:

   今では「中国現地法人に利益が出ても配当できない」という人はいないと思うが、一昔前はよく聞いた。どうしてこのような誤解が生じたのか分からないが、類似の発言をいたる所で聞くことがあり、都市伝説かと思ったものだ。剰余金の範囲で行う期末配当は今も昔も問題なく可能であり、実際に、当社グループも、中国現地法人からは毎年100%近い配当性向で送金を受けている。

 利益送金において最も容易な配当ですら十数年前までは冒頭のような誤解があったくらいだ。なおさら、業務委託料、ロイヤルティー、コミッション、清算配当金(現地法人清算後の分配金)などは対外送金できないとの誤解が今でも多いようだ。

中国ビジネスにおける利益回収のためのルールを正しく知ろう=ロイター

中国ビジネスにおける利益回収のためのルールを正しく知ろう=ロイター

 

 中国の外貨管理を正しく理解できていないがゆえに、徴収できるはずの報酬が回収できていないことがある。中国企業より「中国からは業務委託料やロイヤルティーが対外送金できない」と言われて真に受けるようでは、正当な対価の回収はおぼつかない。

 また、子会社からの利益送金ができないと誤解した結果、変則的な方法を採用してしまい、違法行為として処罰を受ける可能性もある。制度を理解していないと事業採算に影響を与えるだけでなく、法的リスクを招くこともあるので要注意だ。

 とはいえ、中国の外貨管理は、施行されている外貨管理文書が多いだけでなく、地域によって実務運用に幅があるため、正しく理解するのが難しいのも確かである。

 今回は、サービス報酬など中国からの回収に関する根本的な考え方と、重大な問題につながりやすい注意点を紹介したい。

 

■外貨管理の原則 5万ドルが基準値

 外貨決済は、貿易・サービス報酬などの経常項目と、投融資などの資本項目に大きく分類される。経常項目は原則自由と位置付けられている。送金時、外貨管理当局の許可は要らない、という意味だ。

 原則自由とは言っても、性悪説に基づきビジネス制度を構築するのが中国流。完全に企業の自主性に委ねられるわけではなく、送金に際して一定の審査が行われる。

 業務委託料などサービス関係の対外決済に関しては、5万米ドルという金額が送金の難易度を分ける重要な基準となっている。1回あたりの送金額が5万ドル以下であれば政府機関の審査は不要だが、超過すると、税務局の審査が義務付けられる。こうなると対外送金の難易度が上がり、税務リスクも高くなる。

■国際課税で気をつけるべき典型例

 高額のサービス関連送金に関して、外貨管理機関ではなく税務機関が判断するようになったのは、中国の徴税管理の一環である。この結果、企業にとって、対外送金の審査は送金可否だけではなく、税務リスクにも影響する。

 想定されるリスクは国際課税で、代表例として、移転価格とPE(Permanent Establishment)認定が挙げられる。PE認定とは、海外企業の営業拠点(支店など)が中国内にあると見なされ、それに基づく課税を受けること。

 以下の送金は、これらの問題に直結する典型的な例である。

 

(1)「管理費」の意味が日中で違う

 国家税務総局が出した公告では、親会社に対する管理費の支払いは、移転価格の問題になり得ることが規定されている(国家税務総局公告2015年第16号)。これは、過去10年間に遡及する申告調整の可能性を示唆している。

 ここで注意が必要なのは、中国でいう管理費と日本の管理費では、同じ単語を使用していても概念に異なる点があることだ。中国でいう管理費は、実際の役務(サービス)提供が無いにもかかわらず、同一グループであることを理由として徴収する割当金を指している。一方、日本の場合は管理機能の対価という意味合いが強い。

 中国で管理費の支払いが税務問題に直結する理由は、対価性の無い支払いであるためだ。よって、親会社の管理機能の対価(職能部門が提供するサービスの対価)を徴収するのであれば、契約上「管理費」という用語は使用すべきではない。サービス内容と徴収根拠を契約に明確に定義することで、税務リスクを軽減できる。

(2)派遣の対価は「実際の業務内容」に

 親会社から現地法人などに出向者を派遣する際に、派遣対価を徴収すると、PE認定が行われる(国家税務総局公告2013年第19号)。

 出向者の派遣対価徴収がなぜPE認定につながるかというと、日本企業が中国企業に対して人材派遣を行っていると見なされるからだ。結果として日本の親会社が中国で直接課税されるようになる。

 よって、出向者関連で、中国から日本に何らかの送金を行う場合は、出向契約の内容や対価の徴収方法を見直す必要がある。つまり「派遣の対価」ではなく、給与計算、年金納付などに関する「役務対価」として徴収すべきである。このポイントも、(1)の管理費と同様「対価性(実体のある役務を伴っているかどうか)」である。

◇     ◇

 私は、国際ビジネスにおける重要な基準は、欧米であっても中国であっても同じだと考えている。それは、「取引の合理性・妥当性」の順守である。ただ、その判断基準は国によって異なる部分があり、それが法律として具現化されているわけだ。

 ルールを覚えずしてゲームはできない。中国でビジネスをするなら、ルール(法律)を適切に把握すべきである。そしてそれが、事業採算の向上とビジネスリスクの軽減につながるのである。

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