中国で高級白酒じわり復活 社会の構造変化の表れか
2016-07-19 14:58:48 From:日本経済新聞 コメント:0 クリック:
中国の空港免税店で大きなスペースを占める「国酒茅台」は、訪中した人にとって格好の土産物だ。そのお酒を製造・販売しているのが貴州茅台酒。同社は上海株式市場に上場しており、最近の株価は好調だ。今月7日には上場来高値を更新し、昨年末から5割高となった。
■1本2万円台、接待向けで知られる
穀物から蒸留する無色透明な白酒のなかでも、茅台酒は抜群の知名度を誇る。英調査会社ブランド・ファイナンスがまとめた2016年の世界の蒸留酒ブランド価値ランキングでは世界一に輝いた。売れ筋は500ミリリットルボトル1本で1350~1500元(約2万1500~2万4000円)だ。年代物なら1本50万元のものもある。
茅台酒の株価上昇を支えているのが、業績の回復だ。14年、15年と売り上げの伸びが1ケタ台前半にとどまっていたのに対し、今年1~3月期の売上高は前年同期比17%増に加速した。株式市場では「最近は普通の市民が茅台酒をたしなむようになった。中間層の成長が、高級白酒の需要増加に一役買っている」(上海の証券会社幹部)との見方が広がっている。
もともと茅台酒は、高級官僚が接待や贈答に用いる代表的なお酒だった。販売に打撃を与えたのが、13年3月に中国国家主席に就任した習近平氏が進めた「倹約令」による節約ムードの流行だ。トップの大号令で高級料理店は連日閑古鳥が鳴くようになり、当然、茅台酒の売れ行きも低迷した。
■第3次産業、GDPの50%超す
ここにきて接待に取って代わり始めたのが、豊かになってきた中国の中間層による需要というわけだ。中国の地元紙は茅台酒の株価上昇の背景について「中国人が日本に温水便座を買いに行くほど豊かになったため」(8日付の証券日報)と解説している。
1缶10元程度で買える大衆のお酒、ビールの勢いと比べてみれば、白酒の快走はより明確になる。業界団体の中国酒業協会によると、15年の一定規模以上の酒造会社の生産量では白酒が5%増だったのに対し、ビールは5%減と対照的だった。株式市場での白酒人気は茅台酒だけではない。宜賓五糧液や酒鬼酒といった同業の株価も、上昇基調が鮮明になっている。
中国の個人消費動向を示すマクロ経済指標の一つは、小売売上高だ。15日発表の6月の小売売上高の前年同月比の伸び率は10.6%だった。倹約令の影響もあって13年以降鈍化が続き、今年5月には10.0%増と1ケタ台の伸びへの転落が迫った。こうした数字からは、中国の個人消費全体の回復はまだ時間がかかると結論付けざる得ない。
だが、内需拡大に期待を寄せることができるデータもないわけではない。例えばサービス業を中心とする第3次産業が国内総生産(GDP)に占める割合は、15年に初めて50%を超えた。ゆっくりとだが着実に、中国経済はサービス中心の構造への転換が進んでいる。
これは中間層の成長と無縁の話ではない。マクロ経済指標の裏付けはまだ少ないものの、目端の利く株式市場では消費主導の経済への中国の変身をかぎ取っている。
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