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中国とインドに共通するビジネスの「定石」
2016-05-12 09:54:11   From:日本経済新聞   コメント:0 クリック:

ひさしぶりに中国に行ってきた。慣れ親しんだ上海ではなく、香港から列車で入って南部の広東省に出張してきた。いまはインドに住んでいるが、私の海外ビジネスの皮切りは中国だった。

 2004年、上海に事務所を設立し、市場調査や日本企業の進出サポートを4年ほどしていた。しかし、度重なる反日デモやチャイナプラスワン(中国からアジア諸国への生産拠点の分散)の動きなどもあり、中国からインド市場へと舵を切った。そして今回、久々に訪れて感じたのは、中国とインドに「大国としての共通点」が非常に多いことだった。

■爆買いの消費志向も似ている2つの大国

 

買い物客らで混み合うインド・ムンバイの宝石問屋街(2015年4月)=写真 小林健

買い物客らで混み合うインド・ムンバイの宝石問屋街(2015年4月)=写真 小林健

 まだ上海にいたころ、日本人駐在員に「日本に帰って別の仕事をするくらいだったら、中国の経験を生かして未開の大国インドで起業したらどうか」と話すと、かなり不評を買っていた。

 インド事業を始めた10年近く前は、インドに転任してくる駐在員の前任地は東南アジアが多かった。だが、近年は中国経験者が横滑りするケースも目立ってきた。同じ大国である中国市場の経験をインドでも活用できる、という背景があるようだ。

 もちろん、両国には違いも多い。もっとも感じるのは「政治」だ。共産党一党体制の中国は意思決定から運用までのスピードが速いが、「世界最大の民主主義」といわれるインドは総論で賛成しても各論で賛否両論が噴出して実行に移すのに時間がかかることが多い。

 それでも中国とインドには共通点が多い。今回広東省を訪れて、再びその思いを強くした。

 インドでビジネスに携わると、やれ「特殊な市場だ」とか、やれ「難しい」など、ネガティブな反応をしょっちゅう耳にする。しかし、中国市場と付き合ってきた経験からすると、実はそうでもない。

 中国とインドは、世界で類を見ない「人口10億超」という桁違いの大国で、国土も広大だ。それゆえ、地方によって気候も文化慣習も大きく異なり、日本にありがちな「どこを切っても同じ金太郎アメ」のような画一性では語れない。「特殊な状況」がいたる所に存在しているのだ。

 特に、都市と農村の貧富や教育水準の格差は、日本では想像できないほど大きい。言葉は悪いが、両国とも人口が莫大なため、時には日本で考えられないほど生命の価値が軽んじられていると感じさせられてしまう場面にも遭遇してしまう。

 消費者の価値観も似ている。中国だけでなく、インドにも「爆買い」的な消費志向につながる考えが存在するのだ。子供の頃は貧しくて欲しい物が手に入らない時代をすごし、大人になって経済発展しモノがあふれる時代を迎えた世代が多数派を占めている現状が、爆買いの背景にあるのではないか。

 カネさえあれば何でもモノが手に入り、今後も成長し続けるのではという楽観的な思考は、爆買いのような「見えっ張り消費」を生みやすい。中国と同じようなブランド志向の潮流は、インドにも確実に押し寄せつつある。

市場の構造にも類似点を見つけることができる。インドの地方に行くと、零細資本の「パパママストア」や小さな機械工場ばかりだ。いまや中国の都市部は、どこでもスーパーやコンビニエンスストアがあるが、つい最近まで「パパママストア」が中心だった。こうした国々に進出する場合、大手メガチェーンに商品を供給しようとしても棚代などが収益を圧迫してしまうため、零細な店舗や工場にチャネルを広げなければ利益が出にくいという問題が必ず出てくる。

■「日本市場は魅力的だが、閉鎖的で慣習があまりに異なる」

 

インドの零細スーパーで客を待つ商店主(4月、ムンバイ)=ロイター

インドの零細スーパーで客を待つ商店主(4月、ムンバイ)=ロイター

 くしくも北京からデリーに赴任したメーカーの営業担当者が「インドは10~20年前の中国の姿そっくり。中国で地道にやってきたノウハウを積み上げればインド市場も開拓できそうだ」と語っていた。まさにそのとおりだと思う。現在のインドは10年程前の中国を追っていて、今後も中国と似たような成長軌道を辿っていくのだろう。

 基礎的な市場条件が似ていれば、ビジネスの「定石」も当然似てくる。定石を踏み外すと海外ビジネスの成功はおぼつかない。ときにゲリラマーケティングと称される奇襲戦法もあるが、定石があってこそ初めて機能するものといえる。

 たとえば、新興国の金利は日本で考えられないほど高いことがある。すでに低下基調が続く中国の金利は4~5%程度。インドの政策金利も下がったとはいえ6.5%と高い。

 日本から中国やインドに製品を輸出するメーカー担当者に共通する悩みとして、「約束どおりに支払ってくれない」「売り掛け回収が全然進まない」などがある。金利が高ければ、しごく当然に「資金をプールして支払いをできるだけ後回しにする」という発想が生まれる。金利5%で1000万円を1年間預ければ、50万円を得ることができる。

 こうした国でビジネスする場合は、3、4%分のインセンティブをつけて現金を回収する仕組みなど工夫が必要になる。日本市場になじんでいると、素直に受け入れがたい発想だが、海外でビジネスをするなら「日本の方が世界の中で特殊な環境だ」と考えたほうがしっくりくる。

 「日本市場は魅力的だが、言語の壁、閉鎖的な市場構造、ビジネス慣習もあまりに異なる」。以前、日本市場にIoT(モノのインターネット化)サービスを導入したいというインド企業の相談に乗った。インド国内だけでなくシンガポールや上海、ドバイなどに参入した経験を持つ企業だったが、日本市場については「とても自分たちだけでは参入できない」とあきらめて日本のパートナーを探し始めたと明かした。

 中国とインドのような大国同士、新興国同士では多くの共通点を見い出すことができる。むしろ、すでに一度成長局面を終えた日本の定石は、海外で使いものにならないことばかりだ。いま成長しつつある新興国や、巨大な人口や面積を抱える大国の「常識」を素直に受け入れることが、海外進出のもっとも重要でもっとも難しいポイントかもしれない。

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