中国語  日本語
ホーム > 中国 > 記事全文

不正医療広告で当局制裁 百度、検索事業に暗雲
2016-05-13 09:04:14   From:日本経済新聞   コメント:0 クリック:

中国インターネット検索最大手、百度(バイドゥ)が揺れている。
  中国インターネット検索最大手、百度(バイドゥ)が揺れている。1人の大学生の死がきっかけだ。百度の検索結果を信じてがん治療を受けていたが、実際は病院の虚偽情報で百度には多額の広告料が渡っていた事実が発覚、市民らの批判に火が付いた。当局も制裁に動き、事業の先行き懸念から株価は急落した。「中国のグーグル」に何が起きているのか。
当局の制裁は主力の検索事業に打撃となる(北京市の百度本社)

当局の制裁は主力の検索事業に打撃となる(北京市の百度本社)

 北京市中心部。市内有数の大型病院、武警北京総隊第二病院(武警二院)は4日から門を閉ざしている。周囲には多数のパトカーや警官隊が出動し、厳戒が続く。百度の不正医療広告が問題になって以降、患者らの抗議が殺到しているためだ。

 同病院で治療を受けていた21歳の魏則西さんが亡くなったのは4月12日。滑膜肉腫と呼ばれる致死率の高い悪性がんだった。わずかな望みをかけて魏さんは百度のキーワード検索を試す。米スタンフォード大と滑膜肉腫に効果のある治療法を共同研究している――。一番上に表示されたのがこんな触れ込みの武警二院だった。

 魏さんは休学し、親戚や友人から20万元(約330万円)をかき集めて入院する。だが何度治療を受けても病状は改善しない。転移していく腫瘍。命懸けで情報を集めた魏さんが突き止めたのはスタンフォード大との提携も新しい治療法も、すべて病院の偽装広告という事実だった。

 しかも百度は多額の広告料を受け取っている。「こんな邪悪なことが横行していたなんて」。死の間際に残した魏さんの告発文は大きな反響を呼ぶ。かねて百度の検索結果には不正医療や偽薬品の情報も多く、トラブルが絶えなかったからだ。

 「百度の企業責任を厳しく問う」。5月1日には共産党機関紙の人民日報が名指しで非難し、ネット管理当局が大規模調査に乗り出す事態に発展。株価は4月末から2割近く下落した。「最大の危機だ。ユーザーの支持を失えば、30日で破綻する」。10日には百度の李彦宏最高経営責任者(CEO)が全社に緊急メールを流し窮状を訴えた。

 2000年に設立し、中国のネット検索市場で8割のシェアを持つ百度。05年には米ナスダックに上場し、交流サイト(SNS)の騰訊控股(テンセント)、電子商取引のアリババ集団とともに、中国のネット業界で3強の一角を占める。最近は金融サービスや自動車の自動運転の開発にも力を入れていた。

 4月19日には独自の地図サービスを今年中に150カ国・地域に広げると発表して海外展開を本格化しようとする矢先の今回の事件。明るみに出たのは百度のずさんな事業運営と遅れた経営実態だ。

 問題になったのは手数料をもらい、検索上位に広告主の情報を並べる主力事業だ。米グーグルなども手がけるネット検索業界では一般的な手法で、百度も15年12月期まで連続で最高益を更新する原動力になってきた。

 だが、広告をそれと分かるように表示せず、不正広告もほぼ無審査で垂れ流していた。当局は9日、「百度の検索は公正性を欠き、利用者を容易に誤解させる」として広告審査の強化や広告出稿の大幅制限を課す業務改善命令を言い渡した。

 グーグルも11年に違法薬品の広告を適切に排除しなかったとし、米当局から5億ドル(約550億円)の制裁金を科された。対策として広告取り扱いの指針を明示し、第三者機関の協力も得ながら費用と時間をかけて違法広告をなくしていった。審査には数百人から数千人の要員が必要とされる。日本のヤフーも数百人規模で広告を審査している。百度も今後同様の対策を迫られる。

 深刻なのが収入が激減する可能性が高いことだ。ネット広告は売上高の9割に達し、中でも医療関連は2~3割を占める稼ぎ頭だ。李氏は「今後も医療広告が成長のけん引役になる」と度々公言していた。だが当局は医療広告の全面見直しに加え、広告の掲載量の大幅削減も求めている。野村国際の史家龍アナリストは「想定した最悪のシナリオより悪い」と業績悪化リスクを指摘する。


熱に関連する単語の検索:不正 医療広告 百度

前の記事:詩人黄瀛と中日文学交流
次の記事:空軍初の「清華班」、候補生がまもなく配属へ

分享到: 收藏