中国語  日本語
ホーム > 経済 > 記事全文

「新種保険」続々の謎
2016-07-25 14:18:30   From:日本経済新聞   コメント:0 クリック:

 富士山の噴火に対応、再生医療の健康被害を補償――。損害保険各社が変わり種の新商品を続々と開発している。自動車保険や火災保険といった従来の枠にとらわれない「新種保険」だ。相次いで新商品が登場する理由を探ろうと開発の現場に向かった。

 「富士山の噴火リスクに備える保険のようなものがつくれないか」。静岡県庁から損害保険ジャパン日本興亜にこんな依頼が舞い込んだのは、御嶽山に続いて箱根山の火山活動が活発になった昨年5月ごろのことだ。

 開発を任されたのは高林純さん(33)。早速、スイスやドイツを回ったが、類似商品は見つからない。「これは世界初の取り組みになる」と覚悟を決めた。

 保険は事故の発生確率の把握が最も重要だ。だが噴火の発生確率など想像もつかない。噴火の痕跡を残す約2万年前の地質データや「吾妻鏡」などの古文書に残された噴火や降灰の記述を求め、大学教授の元を訪ね歩いた。保険の需要を調べるのも自分の足が頼り。箱根の観光業者などへの聞き取りを繰り返し、観光客の減少が地元の割り箸メーカーにまで影響する実態をつかんだ。

 火山学などの専門家である鹿倉洋介さん(37)がグループのコンサルティング会社に在籍していた幸運もあり、最終的に噴火したら一定額を支払う金融派生商品(デリバティブ)として商品化にこぎ着けた。

 技術革新に伴い、これまで想定外だったリスクも増えている。その際に頼りになるのが保険だ。三井住友海上火災保険は再生医療の健康被害を補償する商品を開発した。再生医療の利用拡大で治療時に感染症などにかかるケースが今後増える事態に備える狙いだ。

 新種保険を開発する背景には損保側の事情もある。損保各社の収益を支えてきた自動車保険は急速に進む少子高齢化で不透明感が増している。2000年度に全体の58%を占めた自動車保険の正味収入保険料は15年度には55%に低下した。新種保険が11%から14%に上昇し、1兆円を超えたのとは対照的な動きだ。

 「変化をチャンスに変える」「世の中で本当に必要な保険の一部しか提供できていない」。6月下旬、東京海上日動火災保険の北沢利文社長は社内会議でこう力説。1年前に新設したR&D(研究開発)チームで商品開発を強化する。三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険も4月に商品開発力を高める専門部署を設けた。

 新種保険は新市場を切り開く武器にもなる。損保ジャパンは東南アジアに攻め込むため、気候変動に備えた農家向け保険を開発中だ。損保各社は従来以上に時代の流れに即応するスピード感を求められる。


熱に関連する単語の検索:新種 保険

前の記事:医療共済、使い勝手向上 先進医療や三大疾病にも対応
次の記事:デジカメなど縮小20市場、上位3社のシェア拡大

分享到: 收藏