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米経済底上げの処方箋は 政策対応、金融より財政
2016-10-18 14:22:25   From:日本経済新聞社   コメント:0 クリック:

米国の景気は底堅い回復を維持しているが、昨年12月に続く利上げの成否や11月の大統領選の結果によっては、下振れのリスクが高まりかねない。ピーター・フィッシャー元米財務次官(現米ダートマス大学シニアフェロー)に、米経済底上げの処方箋を聞いた。
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需要増えず失望

 

 ――いまの米経済をどう診断していますか。

 「過剰生産に苦しむ中国や低成長の日欧などに比べれば、確かに堅調といえるだろう。それでも需要が思うように増えておらず、失望感を拭えない。世界経済の減速や不安定な国際金融市場といった逆風だけでなく、米国の政策にも問題があるのではないか」

 「米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和の効果を広く浸透させ、長期金利の低下を促すことで景気を刺激できると信じてきた。そして通常は右肩上がりになるイールドカーブ(利回り曲線)の傾きを、できるだけ平たんにするよう努めてきた。その前提が必ずしも正しいとはいえない」

 ――どんな問題が生じているのでしょうか。

 「低い長期金利は借り手の資金需要を高める一方で、貸し手の資金供給を抑える方向に働く。金融機関が収益の悪化を理由に融資を絞り、景気浮揚効果を減殺している恐れがある。マイナス金利政策に踏み込んだ日欧では、まさに銀行システムが打撃を受けた」

 「異例の低利があまりに長く続くと、年金や金融資産に頼る老後の生活が心配になり、消費を控えて貯蓄を増やす人たちもいる。本来なら生き残れない『ゾンビ企業』が存続し、米経済全体の生産性を押し下げている可能性もある」

 ――FRBは利上げを急ぐべきだと考えますか。

 「もっと景気回復の勢いがあるうちに、早く利上げしておくべきだった。慎重になるあまり、適切なタイミングを逸してしまったのではないか。必ずしも急げとはいわないが、短期金利の誘導目標(現行年0.25~0.50%)を1%程度まで引き上げるのが望ましい。それ以上にイールドカーブの適度な傾きを取り戻すのが大事だと思う」

 

構造改革も必要

 

 「ここからは財政政策の出番だ。金融政策を正常化しながら、インフラ投資や減税で景気を下支えしてほしい。労働参加率(働く意志のある人の割合)の低下、設備投資の停滞、生産性の伸び悩みは米経済の『三大悲劇』といってもいい。これらの問題を解決する構造改革も欠かせない」

 ――次の大統領候補が保護主義に傾いています。

 「米国民はもともと楽観的だが、いまのような暗い時期が定期的にやって来る。保護貿易は米経済底上げの処方箋ではない。自由貿易を推進するとともに、その痛みを感じる人たちの支援策を講じるべきだ」

 ――日銀が長短金利を誘導する新たな金融緩和の枠組みを導入しました。

 「10年物国債の利回りを0%程度に誘導し、長期金利の下がりすぎを抑えるのは妥当だろう。イールドカーブをうまくコントロールできるかどうかに注目したい。マイナス金利はやはり間違いだ。円相場の押し下げに貢献したとしても、日本経済全体の底上げには逆効果なのではないか」

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