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東芝、想定外の追い風 メモリー活況で今期業績上振れ
2016-11-12 17:25:38   From:日本経済新聞社   コメント:0 クリック:

東芝に想定外の追い風が吹いている。経営の柱であるスマートフォン(スマホ)向け半導体メモリーの価格が高騰し、11日に発表した2016年4~9月期の連結業績は大幅に上振れした。ただ会計不祥事を契機にしたリストラで半導体頼みの側面が強まり、逆に経営が市況に左右されやすくなったのも事実。今のうちにほかの事業も収益力を一段と磨く必要がある。

 「ここまで中国スマホがメモリー容量を増やすとは思わなかった」。平田政善最高財務責任者(CFO)は記者会見で、NAND型フラッシュメモリー需要が上振れた理由を説明した。今は標準品が1個3ドル台と2年ぶりの高値圏にある。

 東芝の4~9月期の営業損益は967億円の黒字(前年同期は891億円の赤字)。16年3月期に人員削減や家電、パソコンなど不採算事業の合理化を実施し、上期に赤字幅が200億円まで縮むと予想していた。それを3度も上方修正して黒字を実現した。ほとんどメモリーの増益分。メモリーだけで営業利益の5割を占めた。17年3月期の営業利益予想も1200億円から1800億円(前期は7087億円の赤字)に修正した。

 「うれしい誤算」の最大要因が中国スマホだった。想定より早いペースでデータ保存容量が64ギガ(ギガは10億)バイトや128ギガバイトが売れ筋となった。半導体商社のトーメンデバイスの妻木一郎社長は「上位機種市場で商機が広がった中国スマホ企業はメモリーの確保を急ぎ、価格上昇に拍車をかけた」と指摘する。

 次に「敵失」。韓国サムスン電子の最新スマホ発火事故が8月に発生。これを機に中国スマホ企業が大増産をかけ、東芝へのメモリー発注を増やした。その前にサムスン電子の中国工場が近隣の電力設備火災で一時止まったことも、需給逼迫の要因となった。複数のフラッシュメモリーを内蔵する記録媒体「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)」の需要拡大も追い風となった。

 ただメモリー市況は変動が激しい。調査会社IHSテクノロジーの南川明主席アナリストは「年内は強含みだが、来年1~3月はスマホ生産がピークを脱し、価格は下がりそうだ」とみる。次の市況悪化時では3次元構造の大容量メモリーの最先端品をいかに早く量産できるかが勝負になる。東芝首脳は「17年前半に量産する」と言うが、サムスン電子の量産はもっと早いとみられる。

 メモリーの価格下落の影響に耐えられるように収益構造に磨きをかける必要がある。もうひとつの柱の原子力事業は燃料や保守などで安定した収益が見込めるが、火力・水力発電設備の利益率はまだ低い。テレビ事業も苦戦が続く。

 今回の決算で新たに600億円の構造改革費用を積んだ。テレビのほか、送配電機器や車載モーターなどを課題事業と位置づけ、メスを入れる構え。規模は大きくなくても、十分な利益を生む体質への改善を急ぐ。

 メモリーは数千億円規模の投資を続ける必要があり、機動的に資金を調達できるようにしなければならない。自己資本比率は9月末で7.5%とまだ低い。市場の信認を回復していない東芝にとっては大きな課題だ。

 足元のメモリーの活況で潤っている間に、打つべき対策はまだ多い。

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