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電池競争、新星は臆さない 中国CATLが台頭
2018-03-14 15:25:47   From:日経   コメント:0 クリック:

 電気自動車(EV)であれハイブリッド車(HV)であれ、電動車に欠かせない中核部品が充電池だ。世界的にEVの普及がどれだけ早く進むのかは、結局のところ電池の性能と価格が鍵を握る。だが中国では経済合理性ではなく国策として国産EVが推進され、先行して需要が生まれる。そこで急速に存在感を増しているのが寧徳時代新能源科技(CATL)だ。

CATLの梁成都所長
 

CATLの梁成都所長

 3月、東京都内で開かれた電池の展示会でひときわ来場者の注目を集めた講演者がいた。中国の新興電池メーカー、CATLで研究開発を担当する梁成都所長だ。「CATLのEV向け電池は技術革新を通じて、内燃機関と同じだけの競争力をつけていくことができる」。梁所長は自信ありげに語った。

 CATLは中国の福建省に本拠を置く。日本のTDKが買収した香港の電池メーカー、アンプレックステクノロジー(ATL)から車載部門が独立して2011年に創業。以後、地場の商用車向け電池などで実績を重ねてきた。欧州完成車メーカーとの関係も深い。技術テストなどを重ね、独BMWには12年から多目的スポーツ車(SUV)「X1」向けに電池を納めている。

上場で1600億円調達計画

 深圳証券取引所での上場準備を進めており、131億元(約2200億円)の調達を計画している。その上場目論見書からは「紅い電池の新星」の姿が見えてくる。

 16年の売上高は148億元と1年で2.6倍に急成長。従業員の数は17年6月末で1万8000人と16年末から半年で6千人近く増えた。上場で調達する資金のうち約1600億円は中国国内の新工場への投資にあてる計画だ。

 16年時点での車載電池の生産能力は容量にして6.8ギガワット時だ。しかし新工場が稼働すれば、20年までに50ギガワット時の生産能力を確保する見通しだ。パナソニックがテスラ向けに米ネバダ州で手掛ける「ギガファクトリー」が、フル稼働すれば35ギガワット時であることを考えると、CATLの勢いがうかがえる。

 

 計画だけではなく、実績も急進が見込まれる。調査会社テクノ・システム・リサーチによると18年度の車載用リチウムイオン電池の出荷量シェアは首位のパナソニック18%に対して、CATLは17%になる見通し。中国最大手だった比亜迪(BYD)15%を追い越す。

 充電池の価格はEVの収益性を左右する。現実的な航続距離を確保するためにEVには大量の充電池を積むからだ。「HV6万円に対し、EVは140万円。売価に反映できるかと言われると答えづらい」。トヨタ自動車の小林耕士副社長は充電池のコストを引き合いに出して、EVの収益性について2月の決算記者会見でこう答えた。

 電池価格を抑えるには量産効果が重要で、各社は投資を競っている。CATLだけではなくパナソニックや韓国のサムスンSDI、LG化学などが能力増強を進めており、英調査会社のIHSマークイットは、世界の車載電池生産能力が20年に16年当時の4.5倍に膨らむとみている。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)が明らかにしたLG化学からの電池セルの調達価格は1キロワット時あたり145ドル(約1万5400円)だ。だがCATLの梁所長は生産量の増加で「22年には1キロワット時あたり100ドル時代が到来するだろう」と語る。

 新興勢力のCATLが先行各社に臆せずに投資競争の真ん中を走れるのは、中国政府が19年に導入する「NEV規制」があるからだ。中国での生産と輸入の一定割合をEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など「新エネルギー車」にすることを義務付ける。EVの台数が割り増しで換算されるなど計算は複雑だが、19年は10%、20年は12%というハードルが設けられている。
 

 産業政策の色も濃く、中国政府が認めた充電池メーカーから調達しなければ新エネルギー車とカウントできない。CATLはその恩恵を受ける立場にいる。

 一方、膨れあがる車載電池のビジネスはリスクと隣り合わせだ。部品世界最大手の独ボッシュの2月28日の発表は、その厳しさを象徴する。

 

 「セルの量産には約200億ユーロ(約2兆6000億円)の初期投資、数十億ユーロのランニングコストが発生する。商業化にはリスクが大きすぎる」

投資リスク大きく

 同社が発表したのは、車載電池セルの内製化断念だ。日産自動車NECと共同出資した車載電池の会社を中国の投資ファンドに売却し、投資競争から距離を置くことを明確にした。

 一方、トヨタはパナソニックと組み仲間集めを進める。電池は他の自動車メーカーにも外販する方針で生産量を確保する。豊田章男社長は「両社で閉じることなく幅広く自動車メーカーの電動車の普及に貢献したい」と語る。両社はより安全性が高い次世代電池、全固体電池の開発も視野に入れる。

 投資負担のほかに電池ビジネスの波乱要因になりうるのが、資源の確保だ。ただそれは再利用の仕組みの構築が、競争力につながるという可能性も秘める。

 電池の正極材に使うコバルトの国際価格は2年で3倍以上に急騰。17年秋には独フォルクスワーゲン(VW)が長期供給の確保に向けた入札を実施したと伝えられ、話題を呼んだ。供給量の半数以上を占めるコンゴ民主共和国では児童労働問題も指摘される。IHSのアナリスト、リチャード・キム氏は「採掘に投資が集まれば価格が安定する可能性はあるが、しばらくせめぎ合いが続く」と分析する。

 資源が貴重である以上、リサイクルが欠かせない。日本勢の強みはHVで蓄積した経験だ。トヨタは使用済みの車載電池を、大型蓄電池システムに再利用する実証実験を18年度から始める。ホンダも使用済み電池の電極からニッケルとコバルトの合金を効率的に取り出す技術を開発している。

 中国でNEV規制が始まる19年は、EVなどの電動車が本格的な普及に向かう節目の年になる。だが電池各社も自動車メーカーもスタートラインに横一線ではない。資源の確保から製造、再利用まで含めたプロダクトチェーンをいかに構築するか。中国はその実験場になる。

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