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台湾「流通王」、スーパーを変革 全聯実業の徐総裁
2016-04-28 18:18:49   From:日本経済新聞   コメント:0 クリック:

台湾の「流通王」がスーパー改革に挑む。台湾にコンビニエンスストアを持ち込んだ徐重仁氏。2014年にスーパー最大手の全聯実業総裁に就き、日本流を取り入れながら新たな店作りのすべを探る。手薄だった都市部で生鮮品や総菜の品ぞろえを強化した新型店を積極出店。17年には現在より2割多い1千店舗の体制を目指す。伝統的な市場が庶民の台所として親しまれる台湾で進む新たな流通革命を徐氏の発言から読み解く。

 

 

徐重仁総裁

徐重仁総裁

 日本や米国はスーパーの後にコンビニが発展した。台湾はコンビニが先に広がった。今やコンビニの店舗数は1万店超。非常に成熟した市場となった。だが、スーパーはまだ伸びしろが大きい。第2の流通革命をスーパーでやりたい

 1970年代に日本に留学して流通業の基礎をたたき込んだ徐氏。「セブンイレブン」の運営会社、統一超商を率いて台湾にコンビニを広げた「台湾流通業の父」は流ちょうな日本語でスーパーにかける思いを語る。

 徐氏を迎え入れた現地スーパー最大手の全聯実業は、2000年代後半に肉や野菜の鮮度を保つ日本の生鮮技術を導入して、伝統的な市場から顧客を取り込んできた。だが、店舗網の拡大に伴い、成長力には陰りが出てきた。一段の成長を目指すため、徐氏に白羽の矢を立てた。

 まず取り組んだのが生鮮品の強みを取り戻すこと。例えば青果ではリンゴやキウイ、バナナを重点商品として鮮度管理を徹底し、伸び悩んでいた客数と生鮮食品の売り上げを増やした。

 

 

キャベツや白菜を山積みにするなど、伝統市場の雰囲気も取り入れた(台北市)

キャベツや白菜を山積みにするなど、伝統市場の雰囲気も取り入れた(台北市)

 客層が変わってきた。コンビニに慣れた若い世代は伝統的な市場には行かない。この流れはチャンス。コマーシャルやキャンペーンを今後も若い世代に的を絞って進めていく

 台湾全土に約800カ所あるという伝統的な市場の中には閉鎖するところも出てきた。14年には廃油を使った食用ラード(豚脂)の大量流通など食の安全を揺るがす事件が多発。「市場は価格が分かりにくいし、衛生面も気になる」(会社員の陳偉伶さん=25)との声も増えている。

 全聯は昨年、台北市中心部に80坪程度の小型店を開いた。ベーカリーや総菜を取りそろえ、近隣の富裕層や会社員の利用を見込む。地方を中心に店舗網を広げてきた全聯だが、こうした小型店を軸にこれまで手薄だった都市部への出店を急ぐ。

 1月には都市部に強い日系スーパーを源流に持つマツセイを4億5千万台湾ドル(約15億円)で買収、53店を傘下に収めた。総店舗数は840を超え、2番手の頂好超市の3倍以上と突き放す。

 

 

 今、我々がぶつかっているのは物流の問題だ。小型店の展開で品ぞろえも変わる。どう商品を効率よく配送するか。これまで培ってきた経験を生かす

 台湾のスーパーでは外部の配送業者がメーカーから店舗へと商品を直送するのが一般的だ。徐氏は物流センターの設置や、配送管理を効率化する情報システムを構築して課題の解決を目指す。

 

 日本のスーパーの経営のやり方や売り場の作り方は非常に参考になる。例えば、イトーヨーカ堂の市場のような雰囲気の売り場はにぎやかで、対面販売は気持ちを盛り上げる

 全聯では旬に合わせて魚や野菜をこまめに入れ替える売り方を取り入れ始めた。日本ではおなじみだが、台湾では発展途上。日によっては以前より売り上げが10~15%増えたという。単に日本をまねているわけではない。水洗いした野菜を積み上げ、庶民が親しむ市場の雰囲気も大切にする。日本流を深掘りして次の成長につなげる戦略だ。

 

 台湾には台湾のやり方がある。(大型店を強みとしてきたフランスの)カルフールのような店は少子高齢化の時代には合わない。庶民がまとめ買いをする必要がなくなるためだ

 世界の流通大手すらライバル視しない徐氏。全聯は20年に15年の2倍以上の2千億台湾ドルの売上高目標を掲げる。主力のIT(情報技術)産業の不振で成長鈍化にあえぐ台湾。全聯が近代的な流通システムを確立できれば、台湾経済のカンフル剤にもなりそうだ。(宮住達朗)

 

全聯実業 台湾スーパー最大手で、公務員向けに安く加工食品や雑貨を売る当局系の小売店が前身。建設業や銀行業で身を立てた林敏雄董事長が1998年に経営を引き受け、赤字経営を立て直し出店を拡大した。2015年度の売上高は前年比11%増の850億台湾ドル(約2900億円)。

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