原油、供給懸念が下支え
2016-05-14 09:59:20 From:日本経済新聞 コメント:0 クリック:
「サウジアラビアは予想以上に強気だ」。5月上旬、サウジの国営石油会社、サウジアラムコが6月積み原油のアジア向け調整金の引き上げを通知すると、日本の石油会社や商社から驚きの声が出た。指標原油に加減する調整金は現物の需給を勘案して決める。代表油種の調整金は昨年11月積み以降は割引きだったが、割り増しに転じた。
「クウェートで4月中旬に発生した労働者ストライキの影響が出ている」(石油会社の原油調達担当者)。クウェートでは日量280万バレルの生産量のうち、100万バレル超の生産が一時的に止まった。アジアの原油の余剰感が薄れたのが、調整金の上げにつながったとみられる。
「夏場のガソリン需要増など需給の引き締まりも意識される中、以前よりも供給途絶のインパクトが増している」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)。カナダで発生した山火事やナイジェリアの政情不安など供給面での不安材料が出るたびに先物相場は敏感に反応している。
底流にあるのは米国のシェールオイル減産だ。業績が悪化したシェール企業は資金調達が難しくなり「原油相場が回復しても簡単には増産に動けない」(英石油情報会社、アーガス・メディア日本代表の三田真己氏)。米エネルギー情報局(EIA)によると、米国の生産量は6日時点で日量880万バレルと昨年6月のピークから約80万バレル減った。
「劇的に縮小する」。国際エネルギー機関(IEA)は12日発表した石油月報で、今年前半に日量130万バレルの供給過剰幅は年後半に20万バレルに縮小するとの見通しを示した。英エネルギー調査会社のFGEは中国などのガソリン需要増も背景に、年後半には日量20万バレルの供給不足になると予測する。相場は需給が均衡に向かうとの見方を織り込みつつある。
もっとも上値は重いとの指摘も多い。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、WTIのファンドなどの買い越し幅は3日時点で約32万枚(1枚=1000バレル)と前週比5%減った。買い越し幅は昨年6月以来の高水準に膨らんでおり、利益確定の売りが出やすい状態だ。
長年サウジの石油政策を指揮したヌアイミ石油鉱物資源相が退任したのも不透明要因だ。サウジは価格支持よりシェア重視を鮮明にするとみられているからだ。供給トラブルという一時的な要因がはげ落ちれば、相場は調整色を強める可能性もある。
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